日本的かわいさ

 少し前のニューズウィークに「日本の『かわいい』がアジアを席巻している」という記事があった。ピカチュウ、キティちゃん、ドラえもん、SDのウルトラマンなどのキャラクターや、パフィー、さらにはプリクラ、厚底のブーツなどなどが、アジア各国で若者に受けているのだそうだ。
 日本の文化としてさらにGTO、同じ屋根の下で、ラルクアンシエル、ロングバケーション、HANABI、DDR、リング、X-Japanなども同じ記事で名前が挙がっている。
 この現象の理由には先進国としての日本への憧れや、例の経済危機を通じて欧米から与えられたのではない自身のプライドを模索するようになったなどが挙げられている。だが、結局はソニーミュージックアジアの副社長のディック・リー氏の発言にあるように「ミッキーマウスやドナルドダックはかわいくない。だが、ポケモンはかわいのです」というところに集約されるのだろう。
 これを読んで、パフィーとピカチュウが果たして同じ文脈で語られるのだろうかという素朴な疑問は残る。些細だけれどもあからさまな間違いも見受けられた。例えば、ドラえもんのことを「青い宇宙服をまとった猫形ロボットで、魔法を用いて悪を正す」と説明しているが、魔法ではなく22世紀の科学で、青いのは昔ネズミに耳をかじり取られた時の恐怖からで、そもそもはのび太のお守りである。あるいはGTOをGrand Teacher Onizukaの略であるとしているが、これはGreatのはずだ。さらにはたれぱんだのことを「droopy bear」なんて呼んでいる。もちろんあれは熊ではなくてパンダだし、たれているのは疲れているわけでもなく弱っているからでもない。ただ単純にたれているのである。
 だがとにもかくにも納得がいかないのはその号の表紙である。ピカチュウとキティちゃんがそこにはいるが、彼らは共に「I (ハート) ●」とプリントされたシャツを着ている。ハートと丸は赤く描かれていて、それぞれLoveとJapanを表していることになる。第一に、彼らは絶対にそのような格好をすることはないだろう。
 それに不満の第二はその影のつけかた。グラデーションを用いて影が描かれているために、妙に立体的でつやつやしているのだ。まるでディズニーの絵のようだ。
 日常的に見ているものとは違和感がある。日本の文化の紹介であっても、アメリカ的なバイアスがかかるとどうしてもそのようになってしまうのだろうか。こんなところにも文化の違いというのは見てとれるものだ。
 例えば、あなたはリアルに立体的で精彩を放っているたれぱんだをかわいいと思いますか?


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