グローカル
国際線に乗るときの荷物は、バックパックかスーツケースがほとんどだ。大まかな傾向として、ある程度の長期旅行をしていた学生時代はバックパック、それ以降はスーツケースということが多い。時には、日常使いのザックを背負い、大きめの紙袋を手にしただけの、国内旅行ですらないような身軽さで飛んだこともあることにはあるが、基本的には上記の二択である。
ところが、この2週間で2度、バンコク・日本を飛んだときに、初めてキャリーバッグを使ってみた。そして、その使い勝手の良さに感心することしきりだった。
何よりの利点はそのサイズである。心持ち後ろ手にして取っ手を握り、ころころと床を転がすことができるのはスーツケースと同じだが、その小回りの良さは比較にならない。バックパックやスーツケースだと、どうしても手に取るときに「よっこらしょ」という気構えが必要で、ターンテーブルでの引き取り、エスカレーターでの移動、あるいは電車の中などでは、その大なる感覚に多少気圧されたり、周囲の迷惑を気にかけたりすることもあるのだが、こちらの方はちんまりした感じでその圧迫感もほとんどない。
作りはしっかりしており、施錠もできるので、預け荷物にすることもできる。もしチェックインカウンターで手放してしまえば、そこからしばらくは、ずいぶんと身軽になれる。同時に、許容されるサイズなので、機内に持ち込んでしまえば、到着地の入国審査の後でターンテーブルに寄って、「まだか、まだか」とじりじり待つ必要がなく、そのままさっと外に出ることができる。
これら二つにおけるメリットとデメリットは相互に背反するが、いずれにせよ、キャリーバッグのよい点は、内容物や重さに応じて、その時々で預けるか持ち込むかを選択できる自由度の高さにある。スーツケースだと、こうはいかない。
一見コンパクトではあるが、実際の容量は見た目で感じる以上にあって、着替えとちょっとした身の回りの品、それに機内で読むための数冊の文庫本とiBookを入れたくらいなら、まだまだ空間がたっぷりと残っている。
しかして、実際の荷造りはそこから始まると言ってもよい。日本に住んでいたときには、お土産を買って帰る帰路が重たいだけの一方通行であったが、バンコクに暮らすようになって、往復共にぎっしり詰められる。
今回、日本へ届けたのは、タイ米にマナオ(ライム)にパクチー(香菜)。トムヤムクンの素に、お粥の素、インスタントラーメン。それに、メコンウィスキー、シンハ・チャーンの缶ビールなど。
逆に、南へ飛んだのは、三宮のジュンク堂で買い込んだ本に加え、友達が貸してくれた「生徒諸君!」「エースをねらえ!」といった大作の漫画。それに「とれたてホップ一番搾り」などであった。
さらに自分の物のみならず、こちらの友達からの頼まれ物もある。免税店で買ったシュウ・ウエムラのビューラーや、ケントのウルトラメンソール。それに、お茶漬けの素、冬季限定のチョコレート菓子、クレンザー、百円ショップの小物類などなど、生活に密接したリクエストが多い。別段、僕だけが引き受けているわけではなく、「日本行くけど何かある?」という問いかけは、日常的にお互い様である。
まるでパイロットを倣うかのように颯爽とキャリーバッグを転がし、慣れた足取りで国際線ターミナルを闊歩するわりには、実はずいぶんとローカルなその中身の品が、あっちからこっちへ、こっちからあっちへ。
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