後書き

 新聞というマスな場であり、大多数の読者にとっては、「とむやむ君、誰、それ?」という興味の段階だと思う(そんなことはないか、さすがに)。
 普段ウェブでは前提としているようなことは、極力その前提条件から記したつもりだ。逆に、タイ料理やアジア旅行が好きな人には、少々歯がゆい面があったかもしれない。
 タイ語名の「パクチー」は、全て英名の「コリアンダー」で通したというのはその一例だ。
 初回にも記したが、タイ文化の特徴である、「つながってる」感覚は、料理にも明確に現われている。特に、移民の多い中国、地理的に隣接したラオス、宗教的な影響の大きいインドやイスラム方面。
 記事では、「どちらかというと正統的料理」の路線を貫いたので、敢えて触れることはしなかったが、最近では日本食もつながりの一つではなかろうか(シーフードという概念の中に、カニカマも含まれるのだ)。
 毎回思いを新たにしたのは、「タイ料理って、ほんと、美味しい」ということだった。何度か言及したが、辛味を含んだ味の組み合わせのバランスの絶妙さに何度もため息をこぼした。
 そして、その味覚と嗅覚の上に花開く壮麗さに、道端の屋台で、わずか20バーツででも出会うことができる幸せ。
 ところで、記事には署名と肩書きが毎回付記されていた。
 企画段階で「何か肩書きがほしいんですが」「特にないんですが。そちらで適当に決めていただければ」というようなやり取りが軽くあり、気がついたら「食文化研究家」となっていた。
 ……。
 蛇足ではありますが、もしあなたがタイを訪れる機会があり、うれしいことに、ここで紹介された料理を何か食べてみたいと思われたら、ぜひ記事の写真をお店の人に示すことをお勧めします。カタカナ表記されたタイ語を伝えても、理解してもらうのはちょっと難しいかもしれないので。
 あなたの一番好きな料理は何ですか?


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