27時間半の帰路

 ミュンヘンの空港で「これが最後か」と思いながらビールを一杯。あまり期待せずに機内で「ビールは無料ですか?」と訊いてみたら「全て無料ですよ」と言われたので、ここでもう一杯。国内線でもビールもトマトジュースも同じだというドイツはやはりよい国だ。

空港で飲むビール
 帰国はミュンヘンを発ってフランクフルト、バンコクを経由して大阪という乗り換えが2回もあるルート。直航便なら12時間くらいですむのだが、そんなすんなりとは行くわけがない。宿から家までは24時間ではきかない。なかなかに飛ぶ前からしんどさが予想される。
 それでもバンコクまでは気楽に時間が流れた。ミュンヘンでは免税店でシングルモルトを3本買い込んだ。フランクフルトの売店でマルクの消費にと最後の最後の小銭まで使ってキャビア(偽物)を買って上空で酒のつまみにしたり。
 極めて早朝にバンコクに到着。疲れがそろそろ顕在してきた。お腹が減っているわけではないが、どうしてもタイのものを食べたいという欲求に動かされてトランジット旅行者用のレストランへ入る。
 バミーナム(ラーメンにも似た汁麺)を頼む。唐辛子や酢やナンプラーや砂糖を入れてかきまぜて味だけは望んでいたものを得たがぬるかった。普通に市内で食べるものの5倍以上の値段だった。
 最終のフライト。日本航空との共同運行便で、実際に乗務しているのはJALウェイズの乗務員がほとんどだった。機体は一昔前のサスペンスドラマの再放送に出てくるような古びた感じだった。果たしてこれで海を渡れるのか?と思うほどの。もちろんきれいには保たれてはいるが、製造されてから長い年月が経過していることを伺わせるには十分だった。
 僕の座席の辺りを担当したのはタイ人スチュワーデスだが、日本語も話せるようだった。食事の選択肢に「カレー」というのがあったから、「それはタイのカレーですか?」と日本語で訊くと「はい」だったので、迷わずそれを選んだ。アルミホイルを開くと、ぬるい普通の日本のカレーだった。クレームをつけるのも面倒なので、何も言わずに食べた。さすがに今回はアルコールを身体に入れようという気にすらならず、ウーロン茶やスカイタイムなんかを飲む。
 不規則な睡眠と食事のパターンを繰り返しているから、頭はぼんやりとしている。映画のために窓は閉められたが、ぼんやりと寝たり起きたりを繰り返した。上映されたのはディズニーのターザンだった。分断された経過とエンディングの10分ほどを見たけど、それで全容がちゃんと分かるという程度のストーリーだ。
 島に向かい始めたころ機内アナウンスでは大阪の気温が36度であることを告げ「まだまだ日本は残暑が厳しいようです……」と教えてくれた。行きも帰りもバンコクの方が涼しかった。
 午後の日差しをぎらぎらと跳ね返す海がまばゆい。
 検疫の質問票でその他の症状の欄にチェックを入れ、「二日酔い」と記入して帰国した。


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