風邪
風邪をひいた。完膚無きまでに。数年ぶりのハードな風邪。
熱のせいで頭がくらくらし、世界が回る。鼻水はとめどなく流れ、しかも眉間の奥の方では供給過多でどんどんストックされている。口で呼吸せざるを得ないから、口の中が乾く。リンパ腺の付近が心臓の鼓動に合わせてずきずきと痛む。食事をしても味がさっぱり分からない。コーヒーもただの苦いお湯だ。
しかも間の悪いことに金曜だ。1週間分の食糧がそろそろ尽きてくるし、洗濯物もたまっている。
帰り道、FM-COCOLOはこれでもかというくらいにインド音楽を流してくる。さすがにつらくて、どこでもいいからとチャンネルを変えた。できることならば駅からタクシーにでも乗ってそのまま布団に倒れ込みたいけれど、寒風の中駅前のサティへ向かう。こういうときは手間をかけずにできて、さっと食べられてその上身体が温まるものでなくてはならない。豆腐、鱈、白ネギ、ホウレンソウなんかを買い込む。ビタミンCの補給のためにミカン。それからハーゲンダッツのミニカップ。普段はバニラか抹茶なのだが、熱のときにはどうしてだかストロベリーがほしくなる。特売してたからラムレーズンも。
中華風のスープにニンニクと豆板醤をこれでもかと入れて、買ってきたものを煮てチゲ鍋のまがい物をつくり、ふうふう言いながら胃に収める。食欲があるのがせめてもの幸い。さすがにアルコールに向かう欲求は皆無。冷蔵庫にはヱビスが静かに冷えている。
食べないわけにはいかないから鍋や食器を使うが、そのまま流しに放ったらかし。ゴミ箱にはティッシュとミカンの皮がうずたかく。
眠っているとぐっしょりとシャツがしみるほどに汗をかく。おかげで何度か目覚める。また洗濯物がふえる。
土曜の日中は本を手に取ったけれど活字を追う気力がなくて、結局マンガをぱらぱらと読んだり暇つぶしにウェブをうろうろしたり。洗濯機を回したけれど、干すところまでいかなくてカゴに移したままで放ったらかし。そのまま布団に戻る。
眠りが浅いからだろう、夢をよく見た。出てくる人物は見覚えのある人達だ。けれどもAという人はBというグループの人達とは無関係なはずなのに、同じ喫茶店にいたりする。Cという人はもうこんなところにいるはずはないのに一緒に海辺を歩いていたりする。あるいはタイ語の先生と次の飲み会の相談なんかしていたり。目が覚めてカーテンを開けると雪景色、という夢も見た。
α-STATIONでJAC TOP 40を聴いていたはずなのに、目覚めるとしゃべっているのはポールだった。16時間眠った。峠を越えたというしっかりした感覚があるがまだ足許は少々ふらつく。後は体力回復に努めよう。
それでも風邪の唯一明るい面は、我々はそれを経験的に知っているという点ではなかろうか。致命的な病気ではないし、あとどれくらい養生すれば良くなるだろうということを身体で知っている。だから、どこかになんとなく「まあ、ひいたものは仕方がない」と、さっぱり諦められる面がある。
おかげで日曜の夜にはそれなりに復活した。どれくらいかというと、キリンの黒ビールを一本飲んだけれど、二本目にはちょっと手が伸びないという程度に。
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