世界の美女に囲まれて

 JALに乗ったのはこれまでに2回。最初はバンコク経由でインド、ネパールを旅した帰りのこと。カイロ発バンコク経由のエジプト航空に24時間の遅れが出て(と言うか、インドの管制官のストライキのあおりをくって、カイロを出発していなかったらしい)、振り替えられたのがJALだった。
 カルカッタからバンコクへ戻るのに乗ったのがインディアン航空だったから、なるほどこれは日本のナショナルフラッグエアラインだといたく感心したことを覚えている。
 二度目はつい先日のグァム往復。「スーパーリゾートエクスプレス」という名がついていた。機内でビンゴ大会があるなど、なかなかのものだった。
 就職先として、航空なら全日空が希望だったのだが業績不振から総合職の募集がなかったので、まあとりあえずという気持ちで日本航空も受験していた。が、途中でふるいにかけられてしまった。「社員割引で航空券が買えたらよいなあ」というのがそもそもの動機だったから、「ちっ、これからもHISとかマップに世話になるか」というくらいの感想であった。
 実際のところJALにまつわる思い出というのはこれくらいなのだけれども、2000年はJALと過ごすことになった。前々からほしいほしいと思っていた、「JAL世界美女カレンダー」を入手したのだ。 世界遺産を背景に各国の美女が月代わりで登場する。
 どうしたわけか、「年末、年越し」という意識が訪れない99年12月だが、とりあえずカレンダーだけは新しくしてみた。すでに、ストーンヘンジにたたずむ赤いセーターをまとった金髪美女がこちらを向いている。
 カレンダーの絵柄というのはやはり毎月めくっていく新鮮な楽しみがあるのだが、「ドラえもんカレンダー」の時代から、どうにも最初にぱらぱらと全部をめくってしまう。花見、七夕、海水浴、サンタクロースなど毎月の行事に合わせたドラえもんの登場人物を12月の終わりにまとめて見てしまうというのは、どこかしらスリルとわずかな罪悪感が伴っていた。問題集で答えを先に見てしまうような。
 そしてやはりこれとて例外ではなく、「いやいや、毎月新たな美女に出会う感動を大切にしよう」という思いと「とりあえず全部見てしまえ」という欲求とがせめぎ合ったのだが、瞬時に欲求の方が勝利してしまった。
 2月「サルバドール・デ・バイア歴史地区のブラジル美女」、6月「万里の長城の中華美女」なんてあたりが特に気に入った。
 戯れにこんな話しをしていたら、ある友達から「なんで世界の美男子カレンダーはないのだろう」という質問が飛び出した。「ならば、僕が写った旅行先での写真をカレンダーに仕立てよう」と建設的な提案をしてみたが、「赤い日を増やしてくれるのならばそれもよいけれど……」とやんわりきっぱり断られてしまった。
 99年に使っていたごくシンプルなカレンダーは3月まで使えたのだけれど、去りゆく年と共に処分することにした。カレンダーを変えることで、気持ちの切り替えも計りたいからだ。
 過去を振り返るよりは、前を向こう。これは決意表明。素敵な年になりますように。そして願わくば、美女に囲まれるような一年であったら、なおよい。


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