潤いを一つください
もともと乾燥肌の上にアトピーの気があるものだから、太平洋側の冬の乾燥した気候は苦手である。
空気中に水分が少なければ付加してやればよいではないか、というしごく真っ当な解決策をどうしてこれまで思いつかなかったのだろう。そう、暑ければクーラーを入れ、寒ければ石油ファンヒーターを動かすのと同じように、湿度が低ければ加湿器を使えばよいのである。
発想のきっかけはオレンジページの記事だった。読者の代表が毎月ある物を選んで、いろいろの種類を実際に使用して感想を述べるコーナーで採り上げられていた。なるほど、そう言えばそういう手もあるなと気付いた次第である。
そんなわけでとりあえずはオンラインショッピングのサイトをしばし眺める。湯を沸かす器械だとばかり思っていたのだが、そう単純でもないようだ。空中に水分を放出する方法には僕が考えていたような「加熱式」ともう一つ「気化式」との二種類があり、それぞれに使い勝手や価格においてメリットとデメリットがある。さらには両者の特質を併せ持ち状況によって使い分ける、その名も「ハイブリッド式」も登場している。その呼び名に思わず苦笑してしまったのだが、どうもこれがよいように思えてきた。
せっかくより快適な生活を求めて購入するのだから、少々値が張っても快適度が高いものにしようとの理由から結局ハイブリッド式で空気清浄機能がついている物を選んだ。
これが僕にとっていかに必要な存在であったかを、世界が転換したのではないかというほど劇的に実感する。まず何よりも、肌の乾燥による間断のないちりちりとしたかゆみが激減した。それによって睡眠が妨げられることもなく、寝ている間に掻きむしってしまい目覚めたら肌がぽろぽろになっているというのも少なくなった。
かゆみがないというゼロの状態が通常ではあるのだろうが、「かゆい」から「ゼロ」になったとしてもそれはそれで上昇であることに変わりはない。
そして主たる機能ではないのだが、部屋の湿度を1%刻みでリアルタイムにデジタル表示してくれるのが意外に興味をそそる。半日家を空けてもどってきたら、だいたい30%台の後半。スイッチを入れてしばらくたち、だんだん楽になってきたなあと感じられるのは50%を超えたあたり。風呂上がりに浴室の扉を開けておいたり、部屋に洗濯物を吊しているともちろん数値は上がり、雨の日は器械に頼らなくてもそこそこの湿度が保たれている。
当たり前と言えば当たり前のこれら現象も、具体的な数字になっていると妙に遊び心をくすぐられる。センサーに向かってはぁっと息を吹きかけてみると湿度が上がって加湿器は自動的に運転を抑えた。アホらしいけどおもしろかった。
トップページ