もしもひょっとして着いたなら

 「PIA」と見て、大体二つのことが連想されるのではないだろうか。なんと言ってもまずは、例のイベント情報誌だろう。僕もたまに立ち読みをするが、買うほどのものではないと思う。
 しかしこの三文字が少々太めの活字で、しかも緑色だったら、僕はまっさきにもう一つの意味が頭に閃く。
 種明かしというほど仰々しいものではないが、Pakistan International Airlines、すなわちパキスタン航空の略称である。日本航空がJAL(Japan Airlines)であり、全日空がANA(All Nippon Airways)であるのと同じことだ。
 これらは航空会社の名称が三文字に略されている場合だが、空港の離発着の案内表示や、航空券には、二文字で表示されていることが多い。
 離陸までの時間つぶしの一つに、それらを眺めて、略称から名称を当てるクイズを自分自身に課すことがある。しかし、いくら考えても糸口すら見つからず解答にたどり着けないものも少なくない。
 いくつか思いつくままに列挙してみよう。まず、AI・エアインディアなぞはそのままだからすぐに分かる。しかし、タイ国際航空のTG、シンガポール航空のSQ、大韓航空のKEなどになると、一文字目はなんとなくそのまま国名の英語表記からだろうと想像に易いものの、二文字目の起源は不明である。
 両方とも何が何やらというものもある。エジプト航空のMSなんて、どこからきているのだろう。MSとぱっと見て、僕がまっさきに思いつくのは、ガンダムでおなじみの「モビルスーツ」の方だ。
 たまたま手元にある「地球の歩き方・タイ」をながめると、ドンムアン空港に乗り入れている内の主立った会社の一覧の中には、3Qなんていうのが載っている。「何事につけ、客室乗務員がお礼を言うのだろうか」なんて想像してみたものの、「なんでやねん、サンキューって読むわけないやろ」と一人で突っ込んだ。ちなみにこれは、中国雲南航空だそうだ。
 旅行中に小耳に挟んだ話しで、決して僕のオリジナルではないのだが、先のパキスタン航空、PIAというのを「Perhaps If Arrive」と読んでみると、なかなかにブラックな雰囲気が漂っていておかしい。「値段は安いんだ、けれどねえ」という否定的な意味合いと同時に、「それでもこれに乗ってくる自分があるんだよな」という自虐的な笑いがあるように思えてならない。
 しかしこのような言葉遊びというのは、一度頭に浮かんだら簡単には忘れられない魅力を持っている。
 海外では、「Passport Is Away(パスポート紛失!)」なんてことにならないように注意深くなければいけないが、たまにはリラックスして、「Pretty Ideal Alcohol(本当に理想的なアルコール)」であるビールでのどを潤したい。
 南洋で「Palm Island Adventure(椰子の茂る島での大冒険)」というのは映画のようで憧れる。しかし、白い砂浜に青空からじりじりと太陽が照りつけ、傍らにハイビスカスが咲き乱れていようとも、「Paradise I Alone(楽園にひとりぼっち)」では味気なく、やはりそこは「Partner Inseparably Accompany(恋人がすぐそばに)」といきたいものだ。


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