とりあえず

 先週末に卒業論文を提出した。既得単位の計算に誤りがなければ、これで京都大学での5年間のカリキュラムも修了である。
 今日は卒論発表会の資料をつくってきた。夜道をバス停に向かって歩きながら、玉入れの得点計算のように、心の中で「ひと〜つ」という声が響く。空に放り投げられた玉は、いずくともなく消えていく。かごに残っている玉の数は、今ではもうはっきり分かっている。あと3つ、つまり学校に出るのは三回だけだ。講座内での予行会に一日、そして久々にスーツをまとって出かける発表会に一日。その翌朝には、関空からパキスタンへ飛ぶ。帰国は3月24日の早朝。その足で卒業式へ出かける。これで、本当に、おしまい。
 卒論が終わるまでは、それなりの時間と労力を割いていたので、大学で過ごす残り時間のことを認識してはいても、それがどうしたという感じだった。精神的にそんなどころではなかったのだ。ここでほっと一息ついて初めて、本当に気がついた。
 あとわずかの間に、しておきたいことがいくつかある。まずは中央キャンパス東側すぐにあるカレー屋で、中ジャンボカツカレーを食べたい。数年前に値上げしてからすっかり足が遠のいていたが、あの量のご飯と分厚い脂身がくっついている豚カツには未練が残っている。生協食堂で海鮮丼やサイコロステーキ、あるいはささみチーズフライ以外の揚げ物(つまり300、400円する品々)を躊躇することなく選びたい。あるいは、それらを一度の食事で一緒のお盆に乗せてみたい。また、農学部正門近くの喫茶店で延々粘りながら、コーヒーのお代わりをしたい。今まではどうしても二杯目が遙かな贅沢に思えて手が出なかったのだ。それから、御蔭通りの中程にあるフランス料理屋で、高い方のランチを注文したい。もちろん、ビールもつけて。
 今回、パキスタンへ飛んだ帰りにはタイのどこかの島でダイビングをしてくるつもりだが、長期旅行もひとまず区切りである。もちろん、今後も旅行はできる。今まででのスタイルの全てが、社会人だからと否定されるわけでもない。お金に余裕ができる分、楽になる面もあるだろう。だがしかし、会社を辞めでもしない限り、時間的制約は大きなものになる。今回は一ヶ月という時間をかみしめていきたい。
 逆に、春からの展望も持っている。新たな趣味として、カメラをかじってみたいと思っている。旅行関係のホームページの中には、非常に美しい写真を見ることができる。いつも現像する度に、プリントと記憶との間に違和感があった。特に、空の色が違うように思えてならなかった。それなりの機械と、それなりの技術を身につければ、多少はあの空に近づけるのではないかという期待がある。
 と、いうわけで3ヶ月ばかり連載してきたこの雑文もとりあえず春までの一ヶ月は間をおくことになる。旅行から帰って、無事卒業し、新生活が軌道に乗ったら再開したいと思っている。今までのご愛読に、感謝。


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