FMラジオ
家にいるときは、ラジオをかけっぱなしにしている。集中して本を読んだり、文章を書いている時はさすがにスイッチを切るものの、それ以外のときはずっとだ。テレビと違い、こちらの行動の邪魔にならないところがよい。CDと違い、どんどん違う曲がかかるところも気に入っている。
選局先の9割はα-STATIONという京都にある局である。日曜の午前中は若い狂言師がDJをしているあたりなぞ、京都的である。
大学に入ってすぐのころ、サークルのボックスでスピーカーから流れてきた谷口キヨコというDJのユニークなしゃべり方が気に入ったのがきっかけだ。考えてみると、つきあい始めてすでに6年目になるのだ。
公開放送を見物したこともあるし、イベントのステッカーまで持っていて、下宿していた頃には家のドアにぺったりと貼っていた。夏のキャンペーンの団扇(ちゃんと竹でできている使い勝手のよいものだ)を旅先に持っていったこともある。
西宮に引っ越すにあたって、聴けなくなるかもしれないという不安はあったが、友人の助言に従ってテレビアンテナに接続するとまったく問題なくクリアに響く。何度か西宮の局を試聴したことはあるのだが、聞いているこちらが心配してしまうほどに会話が進行していない番組があったのでやめてしまった。
あとの1割はFM CO・CO・LOという大阪南港にある局。ユニークなのは、多言語での放送という点だ。試しに、新聞のラジオ欄で目に入る言葉を拾ってみよう。「中国語、ポルトガル語、マレー語、ヒンディー語」これ以外にもタイ語やヴェトナム語やウルドゥー語、英語などなど。
もちろん耳に入ってきても理解できない言語がほとんどだ。けれど、それはあまり関係がないように思える。日本語であったとしても、それほど集中しているわけでもなく、どちらかというと背景に流れる音としてとらえているのだから。むしろそれが背景であるからこそ、旅先にいるような雰囲気を感じ取ることもできる。DJどうしでは笑い合っているのに、こちらはまったく分からないという時なぞは、どこかの国の町中に一人ぽつねんと立ちつくしているような寂しさと快感がある。意味は分からなくともその雰囲気から、何語であるかを類推するのがまたおもしろい。
今の生活からテレビが消えてしまってもあまり問題にならないが、ある日ぱったりとFMとNHK第二から何も流れてこなくなってしまったら、これはかなり困ったことだ。ただひたすらに集中して本を読むか、文章を書くというくらいしかできなくなってしまいそうだから。
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