一人ビアガーデン
1週間近くの居候生活の末、ようやくと自分の住処を確保。世の中には色々と図々しく手前勝手な話しがまかり通っているが、新婚夫婦宅に居候というのも、かなり上位にランクするのではないだろうか。
一緒に買い物に行って荷物運びをしたり、食事を作るのを手伝ったりという生活は、僕にしてみればなんだか合宿みたいな趣があって楽しかったが、先方にしてみればそうとばかりも言ってられないだろう。
「うちにはもうすぐ扶養家族が一人増えるけど、オマエは不要家族やなぁ」という冗談とも本気ともつかないコメントが、悲しいかな、的を射ている。
だけど、手をつないで歩いたり、もうすぐ生まれる赤ちゃんのためのベビーカーの品定めなぞをしている二人の空気を間近で呼吸していると、そういう生活に無性に憧れてしまったことも事実である。いやはや。
部屋探しの最中に「2ベッドルーム、2バスルーム、キッチン、リビング」というとてつもなく広い物件にも出くわした。これで家賃が1万2千バーツ(3万6千円)。広いにこしたことはないが、掃除の手間を考えると住む前からげんなりしてしまう。以前、西宮で住んでいた2LDKのマンションでも一部屋持てあましていたので、今回は広さはあまり勘案しなかった。むしろそれよりも、新しくこざっぱりしている方を優先した。
結局、ワンルームで、テレビ、ベッド、冷蔵庫、エアコン、電話、書き物机、椅子が二脚ついていて、簡単なカウンターキッチンもある部屋に決めた。コンロがないから、いずれは買うつもりだがとりあえず生活するには十分過ぎるほどである。
それでも、ある程度は生活用品をそろえる必要がある。水道水は飲用ではないので、飲み水だっている。歩いて5分でマーブンクロンという大きなショッピングセンター(東急百貨店もある)に出るので、そこのスーパーへ買い出しに。
両手に5つもビニール袋をぶら下げて、ふうふう言いながら部屋に戻ってきた。1.5リットルの飲み水はとりあえず2本だけ。それより何より、ビールである。シンハ、シンハゴールド、シンハドラフト、チャーンを取り混ぜて30本。冷蔵庫にずらりと並べて一人悦に入る。
ベランダからの風景が悪くない。同じくらいの高さにBTS(スカイトレイン)が走っているので、携帯電話のキャリアや家電メーカーなどの結構良いセンスをした賑やかな車体広告が行き交う様を楽しめる。眼下には緑が多く、セーン・セープ運河にはエンジン音を立てながら舟が走っている。ドブの臭いもここまでは届かないので、揺れる水面も心地よく目に映る。ビールを飲むにはとてもよい環境である。
もう一つの生活必需品であるコーヒーは、とりあえずマーブンクロンの中にあるスターバックスを頼ることにする。しかし、屋台で食事をとったら20バーツですむところ、アイスカフェラテのトールサイズにエクストラショット、もうそれだけで90バーツ。これだと、缶ビールが4本飲めるではないか。
アルコールとカフェインとの摂取割合が逆転した生活になりそうだ。
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