心をこめて

 異性に贈り物をするというのは、心ときめきませんか?
 「これで相手の気持ちを射止めてやろう」という思いではないとしても。受け取ってくれたときに、うまくいけば、その人の笑顔に出会うことができるから。
 そういう状況にあったとき、まずは世の中に溢れる物の中から何を選ぶかというのが第一の関門。花束にするのか、食事をご馳走するのか、洒落こんで詩集にでもするか相手に読んでもらいたい小説にするのか、いっそ旅行に連れ出すのか、あるいはアクセサリーにするのか、エトセトラ。
 それを決めたとしても、色やレストランや作者やテーマや行き先やデザインなどの詳細をどうするかというのがまた心躍る悩みの種。相手と自分との状況を鑑みつつ、普段の会話やよく着ている服なんかを思い出して、できるだけ喜んでもらえる物を選ぼうと考えるのは、極めて当たり前だけれど、こと相手が異性となるとそこにちょっとしたスパイスがかかるような気がする。
 例えばそれが、10以上も年齢が違う相手であったとしても。
 ちょうと僕と同じ干支で一回り下の年に生まれてきた女性に、「明日、誕生日なの」と言われて、しかもその直後に「なんか欲しいなぁ」と続くと、「じゃあ、何かプレゼントをしなくっちゃ」って即座に思うのは正しい感情だと、少なくとも僕は思う。
 何が喜ばれるのかちょっと想像がつきにくいので、クラスメートで今年大学を出たばかりという女性に質問してみた。「中三のとき、何をもらったら嬉しかった?」
 彼女の答えて曰く「もらえれば何でも」。それではあまりにどうしようもない。少し状況を説明して話しを聞かせてもらったところ、ネックレスということに落ち着いた。種々のパラメーターが一番良い点で交わるものだと確かに思う。
 学校帰りに、こちらの物価にしてみれば安くはないものを揃えているロフトへ出る。アクセサリーコーナーを物色しながら、そう言えばネックレスを贈るというのは生まれて初めてのことではないのかと思い至る。不確かな、時として懐かしき感情の掘り起こされるいくつかの記憶をたぐってみると、多分そうじゃないかという気がしてきた。指輪はある、ペンダントもある、ピアスもある、アンクレットすらあった。でもネックレスというのはなかったはずだ。
 親しい相手ならば指輪、もしくはピアス。指輪は号数を、ピアスは穴の有無を知らないとあげるわけにはいかないものだから。アンクレットは暗示を込めて。ペンダントは無難。そうすると、ネックレスというのはもっとも中立なのではないかという気がする。ただ、もらう側がどう思うのか、というのは僕にははっきりと分かりかねる領域ではあるが。
 「最近、彼氏ができたの〜」と無邪気にはしゃぐ少女に、「誕生日おめでとう」とネックレスを渡す。その後の言葉は、口にこそしなかったものの、「いい恋しろよ!」とエールが続く。


戻る 目次 進む

トップページ