怠惰な土曜日

 金曜は日本からの友達と飲んでいた。それでも10時半に、しゃっきりとまではいかなくとも、それなりに起き出してテニス。
 コーチに「なんだか今日はパワーがないね」と。そりゃそうだよ、だって寝たの3時だし。
 それでなんだか体力を使い果たしてしまい、シャワーを浴びて洗濯機を回しながら、しばらくはiBookに向かっていたのだけど、どうにも空腹を感じて、家を出る。
 歩いて3分。路地を出て大通りを渡ったところ。開店当初はカフェっぽかったのに、まずお粥を売るようになって、あれよあれよと言う間に、肉まんやシュウマイのガラスケースが軒先に設置され、今では麺類まで売っている節操のないお手軽な店。
 豚と半熟卵を具にしたお粥を一杯。ほろほろくずれるつみれが美味い。甘いタイのアイスコーヒーを食後に一杯。
 それで満足すればいいのに、今日はどうにも生産的な活動はできそうにないなと、半ば諦めながら自分に甘い判断を下したものだから、豚串焼き屋台で5本買い、向かいのコンビニで缶ビールを2本。ついでに路地の入り口で、氷でよい具合に冷えているパイナップル。いつもナイキの帽子をかぶってる、笑顔の優しい兄ちゃんが売っている。
 どんよりした空の下、小さなビニール袋を三つ持って、サンダル履きの足でぼんやり家に向かって歩きながら、ほどよい気温とかすかに吹く風に、目を細める。門を入った足が向かう先は、階段ではなくプール。
 誰もいないプールサイドで、デッキチェアを倒し、ごろっと横になって缶ビールと豚串。
 土曜の午後だけど、右手のビルの向こうの方で工事をやっているらしく、カンカン槌を打つ音が聞こえる。左の方からは庭木のどこかにいるのだろう、鳥が鳴き交わす声。一羽がギュエーと鳴くと、少し離れたところからギィイイーと返ってくる。うるさいよ、お前たちと思いながら、鳥に文句をたれてもしようがない。車の音なのかエアコンの排気音なのか、都市の底を流れる低音がごぉおおと包みこんでいる。
 全天は、灰色の度合いがまばらなだけで、雲量はほぼ10。溶け込むような気分になって、またビールを飲む。飛行機が上空を通過する音が聞こえるけれど、機影は雲に隠れてまったく見えない。
 もちろん暑いのだけれど、汗をかくほどの気温ではなく、とろりとろりとやる気の少ない熱帯の空気に、身体が同化していく。
 あー、タイだなぁ。うん、怠惰、怠惰。気付かぬ間に眠りに落ちる。


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