じめじめ
この頃、やたらと湿っぽい。
4月の終わりごろから雨が降るようになり、涼しくなってほっとしていたら、今度はどうにも降りすぎじゃないのかと訝しく空を見上げる。
一時的にどさっとスコールがくるのはむしろ歓迎。街の空気も透明度を増すし、自分の気持ちもさっぱりする。
しかし、どうも、まるで日本の雨のように、しとしとが長く続く。そうでない間も、どんより重い空。
「タイらしくない」と思うけれど、バンコク人に言わせれば「こういうのもあるよ」と。雨季の終わりごろの短期集中豪雨のイメージが強くて、走りのころの様子が記憶から薄れてしまっていたのだろうか。
暑くないのは何よりなのだが、洗濯物の乾きが悪いのにはまいる。気温の面からは必要のないエアコンも、除湿機代わりにつけっぱなし。扇風機で風をあてても、時間はかかるし、いまいちぱりっとしない。しっとりした服に袖を通すと、気分までじめっとする。
ある日の夕方、地下鉄から出てくると大雨だった。半時間も待てば上がるだろうと、気楽に構えていたけれど、そんな兆候すらないまま雷鳴や稲光まで。これ以上無為に過ごしていてもしょうがない、と、えいやで飛び出した。
ところどころの水たまりをよけながら小走り。家に通じる小道は、もはや川だった。覚悟を決め、くるぶしくらいまではある水の中を歩いて、ようやく帰宅。
濡れた服を脱ぎ、まずやったことと言えば、革靴の丸洗い。ズックやスニーカーではないのだけれど……。とりあえず汚水を流し落とし、新聞紙に乗せて干しておく。完全に乾いたら、しっかり磨き直そうと思うが、それにしても部屋の片隅に置いたその一足が目に入ると、なんとなくみじめな気持ちになる。
どうにも低迷気味な精神状態を、天候のせいにしながらも、なんとか抜け出す方策を考える必要がある。雨季が終わるまでずっとこんなわけにもいかない。
ちょうど友達からリクエストのあった秋刀魚パーティーを、この週末に開くことにした。わいわいと七輪を囲んでビールをぐいぐい飲めば、気も晴れるだろう。
あ。土曜の夜が雨だったらどうしよう……。
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