昆虫に関する新発見

 かのジャン=アンリ・カジミール・ファーブルでさえ知りえなかった、昆虫に関する瞠目すべき新事実を発見した。近々、しかるべき場所で発表しようかとも思う。
 「タイのアリは、和食好き」
 そのかなり渋めの趣味は、天ぷら・すき焼きの比ではない。
 緑の多い庭に面した2階に暮らしているせいか、何度か家の中でアリを見かけたことがあり、ことのほか台所周りには気を遣っている。
 アリが好むのは甘いものだとばかり思っていた。だから、砂糖や蜂蜜などは、少しでもこぼれたら、必ずその場で拭き取るし、食品棚に収めるときにも、密閉したことをしっかり確認するようにしている。
 あるとき、旅行で数日家を空けていて、ドアを開けて驚いた。台所の白い壁に、小さなアリの行列ができている。うわっとばかりにスーツケースも放り出し、始末にかかる。
 おかしい、いったい何に群がっているのだろうとその先をたどってさらに仰天。ジップロックの袋を噛み破って進入した中身は、鰹節。削り節ではなく、節の状態のもの。
 さらに、数日前のこと。昆布でだしをとって、一口に切った鶏肉を入れ、さて火が通るまでの間に高野豆腐を準備しようと思って新品を開封したところ……。やはり同じ種類のアリが袋の中にもぞもぞ侵入していた。
 目の当たりにした僕もびっくりしたけれど、暗いところから急に引っ張り出されたアリの方も慌てふためいて、袋の中で右往左往し始めた。
 脱出される前に急いで高野豆腐を皿に開け、玄関の外ではたき落とす。ざっと見たところ、内部に巣食っているというわけではなさそうなので、全てを追いやったことを確かめてから(雪原のカラスほどに姿を見つけやすい)、水で戻して鍋に投入。
 とりあえず、先ほどの鰹節も、そして残りの分の高野豆腐も、冷蔵庫で保管することにした。
 ちょっと調べてみたら、アリの食性の基本は肉食なのだそうだ。そう言われてみると、どちらもタンパク質の塊のようなものだ。
 タイ人の知り合いによれば、アリや蚊などの虫除けには、レモングラスの精油が効くらしい。アリの通りそうな場所にスプレーで振りかけておくと、部屋もほのかによい香りに包まれ、一石二鳥。
 鰹節が好きでレモングラスが嫌い。タイのアリは、味噌汁は飲んでも、トムヤムクンは苦手なのだろうか。


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