タイのあいさつ「ご飯食べた?」

 タイ王国。首都はバンコク。熱帯に位置し、年平均気温は28.5度。国土は日本の1.4倍。国民の95%が仏教徒。
 だけど、そんな客観的な事実よりも、タイについて特筆すべきは、多種多様な美味と、食べることへの情熱。食に対するその関心の大きさは、日常の言葉の中にも窺うことができる。
 タイ語で「こんにちは」を「サワディー(善と繁栄を)」と言うが、これはわずか70年ほど前に、一人の大学教授によって「発明された」語に過ぎない。
 それ以前の時代には、「ご飯食べた?」と言う問いかけが、広く挨拶語として用いられていた。しかも、サワディーが普及したとは言え、現在でもなお頻繁に耳にする。
 いったい、タイには何があって、どんな「ご飯」が食べられるのだろう?
 中部平原で豊富に収穫される香りのよい米。鶏や豚は言うに及ばず、アンダマン海やタイ湾からは海の幸、母なるメコンからは川の幸。さらに、季節に応じた色とりどりの果物……。豊かな食材は、近隣の国々との関わり合いの中で独自の発展を遂げた様々な美味となる。
 このコラムでは、バンコクに暮らす筆者が、口にすると思わず笑みがこぼれるような、そんな料理を紹介する。
 タイ語には「満足な生活を送る」ことを意味する「良く食べ、良く生きる」という慣用表現がある。満たされた生活のためには、まずは良く食べることが大切なのだ。

神戸新聞/2005年4月1日掲載


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