赤い火の空芯菜炒め

 「赤い火の空芯菜炒め」という意味の、パット・パックブン・ファイ・デーン。
 空芯菜は、その名の通り、茎が中空になっているヒルガオ科の青菜。葉は、ナイフのようにほっそり長い三角形。花の形が似ていることから、朝顔菜とも言う。
 水辺に育ち、ちょっと地方へ行くと、よく川べりに青々と茂っている。
 栄養価が非常に高く、キャベツと比べると、食物繊維は4.6倍、カロテンは238倍も含まれる。さらに、血糖値の上昇を抑制する効果も明らかになっており、糖尿病の予防にも期待が持たれている。
 東南アジア一帯で広く食されており、日本でも、沖縄ではウンチェーバーと呼び、伝統的な食材の一つである。最近では、スーパーの野菜売り場でも見かけるようになってきた。
 その名の通り、真っ赤な炎が舞い上がらんばかりの、ごうごうとした強火で、手早くさっと炒める。シンプルに、ニンニク、唐辛子、豆醤(味噌に似た調味料)、それにオイスターソースで味付け。
 葉にはかすかにぬめりがあり、茎はしゃくしゃくした歯ごたえ。
 唐辛子そのものズバリを口にしなければ、決して辛い部類の料理ではない。日本人の口によく合う味で、はじめてタイに来た人でも、一様に気に入ってくれる。タイ米との取り合わせも絶妙。
 野菜を食べ終わっても、皿にはまだいい味の汁が残っている。遠慮する必要はない。アジアの料理はそもそも、おかずをご飯にかけて食べることも多い。
 行儀悪くもなんともない。汁をすくってご飯にかけ、最後まで味わい尽くしたい。

神戸新聞/2005年5月20日掲載


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