ソムタム
形や大きさからの連想で「鼠の糞」と冠される、小さな小さな唐辛子(キダチトウガラシ)は、ある意味で「タイ料理は辛い」という発想の根幹をなしている。
でも、もちろん、タイ人にだって刺激的な方を好む人もいれば、辛いものが苦手な人もいる。パパイヤの和え物、ソムタムを注文するときも、唐辛子の個数を指定できる。
「ソム」は東北方言でいろいろな味が混ざった様子、「タム」は杵で搗く動作を意味する。
まず卓上の臼に唐辛子とニンニクを入れ、杵で叩きつぶして香りを出す。ライム、ナンプラー、タマリンド酢、砂糖を加え、味のベースを作る。
まだ熟れていない堅いパパイヤの皮をむき、手に握る。縦にざくざくと切れ目を入れ、寝かせた包丁を手前からすっと入れると、ばらばらと千切りになる。これをよく搗いて、味を染み込ませる。干しエビ、トマト、ピーナツ、十六大角豆を加え、全体を和える。
辛味と甘味と酸味が絶妙に混じり合い、香りもよい。歯ごたえはしゃくしゃく。辛味の緩和には、添えられた生野菜をかじる。
いろいろとバリエーションがあり、塩漬けのカニや発酵した小魚を加えたり、パパイヤの代わりにニンジンやキュウリ、あるいは果物を使ったものまである。
元々はラオスや東北タイ一帯の料理だが、今では広く食べられている。
シリントーン現王女も、ご自身で「ソムタムの歌」を作詞されたほどのお気に入り。
そこにも歌われるように、ふかした餅米や、タレに漬けて炭火でこんがり焼いた鶏肉と組み合わせると、本当においしい。
神戸新聞/2005年6月3日掲載
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