カボチャプリン

 ココナツミルクに卵と椰子砂糖(サトウヤシの蕾の先端を切り、そこから採れる液体を煮詰めたもの)を混ぜ合わせて蒸した、タイ風のカスタードを「サンカヤー」と呼び、パンに塗るペーストにしたり、餅米と合わせてお菓子に仕立てたりする。
 アヒルの卵を用い、ニオイタコノキの葉を絞って香りをつけたサンカヤーが、ある野菜と出会うと、甘く冷たい一品になる。
 見た目は緑のごつごつ、中身は黄色く、ほこほこ甘いその野菜とは……?
 答えは、カボチャ。その名称の由来は「カンボジア」にある。原産地は中南米だが、16世紀にポルトガル人が長崎に持ち込んだ物がカンボジア産だったことから、そう名付けられた。
 上部を切りとり、種を抜いたカボチャにサンカヤーを流し込み、火が通るまで30分ほど強火で蒸す。
 サンカヤー・ファックトーンは、いわばカボチャプリン。冷蔵庫でよく冷やし、切り分けていただく。黄色とクリーム色でくっきり彩られた断面は、見た目にも愉快。
 スプーンがすっと入るほど柔らかい。皮も薄いので、そのまま口に入れてもまったく気にならない。
 カスタードの部分は相当甘いのだが、椰子砂糖の甘味なので、コクがありながら後口はさっぱりしている。カボチャは、日本のものとは違い、どちらかというとあっさりめ。なので、両方を一緒に食べる、ほどよい味になる。
 当のカンボジアにも同じお菓子があり、ラパウ・ソンクチャーと呼ぶ。かき氷、ココナツミルク、コンデンスミルクをかけて食べるので、こちらはさらにこってり甘い。

神戸新聞/2005年6月24日掲載


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