ふわふわナマズの和え物
タイ料理のメニューを開いて、「魚料理」に並んでいるからと、ヤム・プラードゥック・フーを注文すると、出てきたものに戸惑うかもしれない。
皿には、そもそも肝心の魚の姿が見当たらない。尾頭どころか、骨も身も、何もない。
代わりに、でんと盛られたきつね色のもしゃもしゃが、不可解さを加速する。あえて近しい物を挙げるなら、天かすだけで作られたお好み焼きにも見える。上にぱらりと飾られているのはピーナツ。
同時に、彩りの良い野菜の小皿も出てくる。大根のような白い千切りは、熟す前のマンゴー。濃い緑色をした小さな葉はミント。それに、紫玉ネギの薄切り。和えられているドレッシングの材料は、ナンプラーをベースにニンニク、トウガラシ、砂糖。
タイに来た友人に食べさせて、これが何か判別できたのは未だいないのだが、茶色いもしゃもしゃこそが、魚。
「ふわふわナマズの和え物」という名が示すとおり、蒸したナマズの身を細かくほぐし、卵と粉をまぶし、たっぷりの油でふわっふわに揚げてある。
さっそく、揚げたての熱々に取り掛かる。油っこいかと思いきや、ドレッシングを全体によくかけ、添えられた野菜と共に口に入れると、鼻に抜けるミントの香りも相まって、むしろさっぱり爽やか。
甘めな味付けではあるが、それ以上に舌を刺す唐辛子の辛味が食欲を刺激する。
さくさくした揚げナマズと、しゃくしゃくしたマンゴーの歯ごたえ、そこにコリッとしたピーナツの食感の取り合わせも、口を飽きさせない。
神戸新聞/2005年7月8日掲載
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