タガメの唐揚げ
虫を食べると聞いたら、あなたは少し眉をひそめるかもしれない。しかし、あえてそれを紹介するのは、何はさておき、味が良いからにほかならない。
昆虫は、昔から広く世界的に食料とされている。アジアに目を向ければ、特にタイ北部・ラオス・ミャンマー・雲南省辺りを「食虫トライアングル」と呼ぶ研究者もいるほどで、日常食の一つである。
バンコクでも、よく虫売りの屋台を見かける(主な購入者は、食虫の背景を持った地方出身者)。自転車に取り付けた台の上に、何種類もの昆虫が山盛りされている。
メンダー・トートと呼ばれるタイワンタガメの唐揚げは、特に人気の一品。
正直、見た目には躊躇するものがある。だが、だまされたと思って口にしてみると、予想は良い意味で裏切られるだろう。羽や足などの固い部分をちぎって、お腹の部分をちゅうちゅうぽりぽり。脂ののったアジの干物のような芳醇な味がする。口に触る殻は、知らなければエビのそれに近い。甘辛いタレをかけるので、味はつくだ煮にも似る。
また、独特の匂いもあるのだが、それを生かしてナンプラーに漬けたり、粉末にしたりと、調味料としても用いられる。
昆虫類は、総じて高タンパク、高カロリー。必須アミノ酸やビタミンにミネラルも豊富で、肉類にも十分匹敵する。牛や豚を育てて肉にすることと比べれば、採取や飼育も容易。現在では、人類の未来の食料としての期待も持たれている。
その上、冷えたビールのつまみにもってこい。たかが虫、されど実に立派な虫なのだ。
神戸新聞/2005年7月15日掲載
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