タップティム・クロープ
夏の盛り、照りつける太陽を浴びながら食べるのにぴったりなおやつと言えば、かき氷。
タイにも、似たような氷菓子があるが、店によって、かき氷状に細かくしたものと、かち割りくらいの比較的大きめなものとの二種類。
そして、氷その物と言うよりも、冷やした各種の具を食べることの方が主眼。
果物にゼリー、タロイモにカボチャにトウモロコシ、あるいは白キクラゲやギンナンなどなどが、バットに盛られ、にぎやかに並んでいる。シロップ漬けには、甘い香りに誘われた蜂がぶんぶん舞っている。
白いココナツミルクに、薄紅色の粒が浮かぶタップティム・クロープは、「歯ごたえのよいザクロ」との意味を持つ。
だがしかし、材料のどこにもザクロは存在しない。
ザクロの実に模したつぶつぶの正体は、オオクログワイという植物の地下茎。おせちに入れる日本のクワイとは種が異なり、パピルスや葦と同じカヤツリグサ科に属する。大きさはちょうどクリくらいで、皮をむいた中身は白い。
これを、小指の爪ほどの大きさに四角く切って、食紅で色づけ。馬鈴薯でんぷんを周囲にまぶし、沸騰した湯でゆでる。実が浮いてきたら、冷たい水に取る。
半透明のピンク色をした「ザクロ」を器に取り、絞りたてのココナツミルクとシロップを注ぎ、氷を乗せ、ココヤシの果肉を添える。
唇に吸い付くようなぷるぷるの向こうに、シャクっとさわやかな歯ごたえ。冷たく甘いココナツミルクと共に、すっとのどを下りてゆく。
炎暑に、ふうーっと一息。
神戸新聞/2005年7月29日掲載
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