ザボンサラダ

 「朱欒」という字を読めますか?
 ザボン、である。ポルトガル語からの転化。1667年、ジャワから長崎へやって来た中国人によって種が贈られたのがそもそも。文旦とも言う。
 かんきつ類の一種で、ナツミカンやグレープフルーツなどは、自然交雑によって生まれたこの仲間である。
 東南アジアが原産で、タイではソムオーと呼ぶ。バンコクの西隣、ナコンチャイシー県が名産地で、国道脇にはソムオーをピラミッドのようにうずたかく積んだ店が並んでいる。
 薄緑色の真ん丸な果実は、片手ではつかみきれないほどに大きい。そして、実が大きければ、その房も手に乗るようなサイズ。薄皮をむいて表れる中のつぶつぶも、一般的なミカンのそれの4、5倍はある。
 そのつぶつぶの一つずつを手で丁寧にほぐし、サラダに仕立てたのが、ヤム・ソムオー。
 ドレッシングには、発酵したエビのペースト、椰子砂糖、ナンプラー、タマリンド酢、焼き唐辛子や干しエビなどを油で練ったペースト、そこにライムを一絞り。
 具には、豚のひき肉とゆでたエビ。紫タマネギ、そぎ切りしたレモングラス、生のトウガラシも少々。
 新鮮なココナツミルクを加え、ザボンの粒が壊れないように、全体をそっと混ぜ合わせる。
 辛味や酸味の刺激は、ココナツミルクのこっくりした味に、うまい具合にくるまれる。口の中でプチプチとはじけるザボンの果肉から、すっきりした甘みと清涼な風味の果汁が舌に踊る。
 暑い日に、特に気持ちよく食べられる一品だ。

神戸新聞/2005年8月5日掲載


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