パイナップル焼き飯
何せ、見た目からしてかわいい。丸ごとのパイナップルを器に、焼き飯がよそってあるカーオ・オプ・サパロットは、南国気分満点。
カレー粉を混ぜているので、米は黄色く染まっている。具は盛りだくさんで、普通の焼き飯のような、エビや鶏肉は当たり前。
ふりかけられているのは、糸のように細かくした豚肉の甘辛い干物。薄切りにした中華の腸詰からは、五香粉の複雑な香りが立ち上り、肉の脂がうまみを深める。干しぶどうが独特の甘みを、歯ごたえにコリッとアクセントを与えるのはカシューナッツ。
器を作るためにくりぬいた実も、さいの目に切って混ぜる。じゅわっと飛び出す甘酸っぱさが、油っけを打ち消して、いくらでも食べられる。
タイでは、丸っこい形をしたシーラーチャー産のパイナップルをよく見かける。通年で収穫できる上、他種に比べ、甘みも果汁も豊富で、しかも実が柔らかい。
街中の果物屋台では、氷を敷いたガラスケースの中で、つややかに黄色く輝いている。ひんやりした果汁に、喉の渇きがすっと癒される。
ところで、含まれる成分の一つ、タンパク質分解酵素のブロメラインは、肉を柔らかくしたり、消化を助ける働きがある。
その辺りの誤解から、インドネシアでは妊婦が食べてはならないとされる。なぜなら……お腹の赤ちゃんが溶けてしまうから。
これは少々怪談じみた話だが、実際のところ、クエン酸やリンゴ酸は食欲増進に、ビタミンB1は夏ばて回復にも効果があり、まさにこの季節にぴったりの果物なのである。
神戸新聞/2005年8月12日掲載
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