おかゆ

 明日は、七草がゆの日。正月料理で弱った胃腸をいたわるためだが、これに限らずおかゆと聞くと、どうしても養生食としてのイメージが浮かんでくる。
 ところが、タイのおかゆは日常のご飯として、しっかりと地位を占めている。消化のし易さや、熱々を食べることから、体調がよくないときにも用いられるが、それだけではない。
 特に最近は、フランチャイズで展開するチェーン店も増えている。オフィス街の駅構内に出ている支店で容器入りを買い、会社に持ち込んで朝食にする人もいる。
 タイ語のジョークという名は、広東語の「粥」の読みに由来するように、むしろ中華がゆに近い。
 材料はもちろんタイ米なのだが、生産・流通過程で砕けたものを使う。粒が小さい分、ほとびやすく、全体的にとろりと仕上がる。
 だしは、豚の背骨からとった、しっかりした味のスープ。
 具には豚肉を使うことが多く、軽く団子状に丸めたひき肉は、ほろほろと口の中でくずれる。レバー、心臓、胃袋、腸などの内臓も入る。丁寧に洗った上で下ゆでされているので、軟らかく、臭みもない。
 千切りショウガと青ネギを上からぱらり。
 そこに生卵を落としてかき混ぜると、やわらかな黄色が真っ白なお米に溶け込んでゆく。
 食卓に置かれているコショウと、あっさりした白醤油で味加減。酢漬けトウガラシや、ナンプラーもあって、好みの味に仕立てられる。
 しっかりとお腹に収めたければ、中華鍋にはった油で次々と揚げられる、ほのかな塩味がついた揚げパン、パトンコーを投入。すぐ口にすれば、さくさくとした歯ごたえが楽しめる。しばらくおいてふやかしても、むっちりおいしい。
 具には鶏肉や白身魚の切り身を使うこともあれば、生卵の代わりにピータンを落とすのもよい。
 丼に盛られ、ほかほかと湯気を立てているジョーク。レンゲですくって口に運ぶと、なめらかな舌触りと、やさしい味に思わずにっこり。お腹にも心にもうれしい一杯。

神戸新聞/2006年1月6日掲載


戻る 目次 進む

トップページ