カーオ・ソーイ

 「ハートヤイ風・鶏の唐揚げ」、「スコータイ風・舟の麺」など、土地の名を冠される名物がある。
 バンコクから北へ700km。千メートル級の山々に囲まれたタイ第二の都市、チェンマイ。
 かつては、ランナー王朝の首都として栄華を極めた。現在は、独自の芸術と、花や緑の美しさで知られ、「北方のバラ」とも称えられる。
 濃厚なココナツミルクと、カレーにも似た香辛料を使った汁そばも、その名をとってカーオ・ソーイ・チェンマイと呼ばれる。
 ターメリックの黄金色が、乳白色のココナツミルクと溶け合った上に、赤いトウガラシ油が丸い玉となって表面に浮かんでいるスープ。レンゲに取って一口すすれば、熱く刺す刺激の中にも、こってりした甘味が舌をまろやかに包み込む。
 ごくりと飲み込んだ後には、鼻を抜けるエキゾチックな香りに陶然となる。ターメリックをはじめ、ショウガやコリアンダーの種などの数種の香辛料が、炒った上で混ぜ合わされている。
 生の紫タマネギ、コリアンダーの葉、カラシナの漬物、それに揚げトウガラシが色鮮やかに丼の表面を飾り、さらにその下にはカリカリの揚げ麺も乗せられている。
 トッピングをかき分けた末に出合うのは、小麦と卵から作る平麺。じゅうぶんに縮れているので、たっぷりのスープと絡み合って口に届く。
 大ぶりに切られた鶏肉は、箸でつまむだけで骨が外れるまでに軟らかく煮込まれている。スープを吸ったゆで卵の黄身のほくほく感も忘れられない。
 ライムを搾って全体の味をぎゅっと引き締める。干しエビ・タマネギ・ニンニク・トウガラシなどをじっくり炒めた味噌状の調味料を溶けば、辛味だけでなく、さらなる複雑なうまみが花開く。
 チェンマイを含めた北部地方は、歴史的にも多くの民族が往来し、隣接するミャンマーやラオスの影響も受けたため、独特の文化を誇っている。
 カーオ・ソーイもルーツは雲南にあるとも言われ、ミャンマーにも、オンノゥ・カウソエという同種の料理が伝わっている。

神戸新聞/2006年3月3日掲載


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