シャコのニンニク揚げ
店の前に、ずらりと「材料」が並んでいる。
ゆったりと水槽に泳ぐハタやアカメなどの大型の魚。底の方にかたまって、せわしなく足を動かすエビ。敷き詰めた氷の上には、銀色に輝くマナガツオに、赤や黄色も鮮やかなフエダイ。
魚だけではない。殻ごとのカキやホタテガイ。肉厚のイカに、一抱えもあるようなロブスター。巨大なハサミごとワラで全身を結わえられ、身動きの取れないカニ。時には、卵を抱いたカブトガニに出合うことさえある。
バンコクでシーフードの店に足を運ぶと、店に入る前から興奮に包まれる。さあ、今日はどいつを食べようかと舌なめずり。
ここはやはりタイらしく、素材の味を活かしながら、こってりたっぷりの味と香りで調理したものを注文する。
「ライムをきかせた汁に浸し、一匹丸ごと蒸し上げる」、「唐揚げにしたところを、甘辛酸っぱいあんに絡める」、「トムヤムスープの具にする」などの定番の調理法に、好みの素材を選んで組み合わせれば料理ができあがる。
カン・トート・クラティアムは、ニンニク、塩コショウ、オイスターソース、ナンプラーなどで下味をつけたシャコを油で揚げた一品。
シャコと言っても、日本の物とは大きさの桁が違う。ちょっとしたイセエビくらいはあるので、二人で一匹を頼むくらいでちょうどよい。
網ですくわれ、調理場に消えて数分後。ほどよいキツネ色のシャコが、ぶつ切りにされて登場。つやつやと油が輝き、その上にはかりかりのニンニクがたっぷり。
食べやすいように、殻には包丁が入っている。ぱっくりと割って、むっちりした熱々の身を頬張ると、ニンニクの香りに負けじと、シャコの甘味があふれ出す。手も口もべとべとにしながら、一心にむしゃぶりつく。
料理名のシャコを表す「カン」の部分を、「クン(エビ)」、「プラー・ムック(イカ)」、「プラー・ラーク・クルワイ(モトギス)」などに置き換えれば、色々とバリエーションも楽しめる。
神戸新聞/2006年3月10日掲載
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