ゲーン・ソム

 タマリンドは、高さ25mにも育つマメ科の木。アフリカ原産であるが、広く世界の熱帯地域に育つ。
 果肉に含まれるアルファハイドロキシン酸は、肌の老廃物を取り除いて張りや潤いを与える。美白に効果があるため、古くから石けんやクリームに利用されている。
 また、アントラキノンは排泄を助けるので、タマリンドを酸味料として用いるゲーン・ソムは、「ダイエットに効く」とされる
 タイ料理で「ゲーン」と呼ばれる汁気の多いおかずの類は、物によってスープとして飲んだり、カレーのようにご飯にかけて食べたりする。
 スープの方の代表格と言えるのがゲーン・ソム。エビや雷魚を具にする他、たっぷりの野菜が入る。
 インゲンのようだけど、70cm以上も長さがあるササゲ。ベータカロテンや鉄分、カルシウムも豊富なミズオジギソウの若芽。キャベツ、ハクサイ、ダイコンなど、日本でもおなじみの野菜。
 さらに、食物繊維や各種ビタミンを有するチャオムの芽を刻み込んだ卵焼きも一緒に煮込む。
 キノコのような独特の匂いを持つチャオムと、スープを吸った卵との組み合わせはとりこになる。外国に暮らすタイ人は、この味が恋しくなると、代わりにニンジンの葉で作るそうだ。
 この料理の真面目は、「酸味と塩味と、ほのかな甘味との絶妙のバランスにある」と言われる。確かに、とりどりに咲き乱れる花畑のように、いくつもの味と香りが広がるが、外国人である我々にしてみれば、「辛味」の方も付け加えておきたい。
 調味料は、乾燥トウガラシ、紫タマネギ、ニンニク、ナンプラー、カピ(発酵させた小エビの塩辛ペースト)、ヤシ砂糖、ライム。それに、よく熟したタマリンド。
 タマリンドは、果実以外も用途が広い。樹幹は、輪切りにすればまな板になるし、マホガニー材の代用にもなる。
 その活躍は、目に見える方面だけにとどまらない。縁起の良い木なので、家の西側に植えれば、人から畏敬を集める上、悪霊をも防ぐと言われる。

神戸新聞/2006年3月17日掲載


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