疲れた身体にメルチメック(赤レンズ豆のスープ)がしみじみとうまい。インドあたりで食べたダルにも似ている気がする。すりつぶした豆をスープに仕立ててあるので、栄養も豊富なことだろう。何より熱々のところを口にすると、全身にしみわたる滋味が感じれられる。
午前中にユルギュップへ出ようと思い、オトガルにある旅行代理店でバスについて尋ねてみた。「ここからはない、屋外博物館から一時間ごとに出ている」
いったん宿にもどって「ノルウェイ」をぱらぱらとしている内に、眠ってしまった。どうやら身体はまだ休養を必要としているみたいだ。
村の中心の通りをまっすぐに歩き、屋外博物館へ曲がる角の所に旅行代理店がある。先日もここで博物館の地図をもらったのだが、念のためにここでもユルギュップ行きのバスのことを聞いてみる。
「ちょうどこの向かいからドルムシュが出るわよ」と、この間もいた女性が教えてくれた。そばにいた男性も時計を見つつ「あと5分くらいだろう」
バスに乗っていると、ほんの短い間だが、有名なきのこ岩が立っている。いやきのこと言うのではなく、不安定にも細長い岩の上に、ぽこっと頭をのせたようなものだった。
バスを下りると、「ユルギュップ」「ツーリストインフォメーション1km」という標識を見つけた。それに従って歩いていると、同じ停留所で下りたおばあさんに「こっちよ」と教えられ、坂道をひたすら下ることになった。もし帰りもここまでもどってこなくてはならないのなら、少々しんどそうだ。
「HOUSE WINE TEST」という看板を見つけ、思わず指をパチンと鳴らした。1キロではきかない距離を歩き、ようやく町の中心部に出た。
インフォメーションで地図をもらい、近くのワイナリーの場所に印をつけてもらった。また、ギョレメに戻るドルムシュはすぐ近くのオトガルから30分おきに出ていることを聞いた。これであの坂道を上る必要がなくなった。
「希望の丘」と名付けられた丘を迂回するように、これまで来たのとはまた別の道を上ってゆく。ところが地図そのものがいい加減で、ボールペンで書き込まれたワイナリーの場所もさらに適当だった。さすがに道路自体は正しく書いてあるのだが、目印にすべき途中の建物の位置が正しくない。とりあえず当たりをつけた付近にあったホテルで「トゥラサンというワイナリーはどこにあります?」と尋ねてみたが、知らないとのこと。
行きつ戻りつしていたのだが、どうにも思った以上の先にようやく見つけた。しかし、肝心の試飲は小さなグラスにほんの一口。せっかくの努力が報われるほどのアルコール量ではなかった。けれどカウンターにいたスカーフを巻いた女性が素敵だったし、何よりこれだけ歩いて一口ではおさまらないから、結局白を一本買った。
先ほどの「希望の丘」の頂上へ上り町を見下ろす。近くにカップルがいたので、悪いとは思いつつも写真を撮ってもらった。
いい気分ではあったが、土産物屋の女性や近所の子ども達が「コンニチハ!」と声をかけてきても、まるっきり対応しなかった。それほどに元気になった、というわけでもなかったのだ。話しかけてくれる人ににっこりと笑い返せるときもあるけれど、そうなれない時だってある。
オトガルの中にある旅行代理店でギョレメ行きのバスはどこから出るのかを尋ねたら、わざわざその場所まで引っ張っていってくれて「時間は分からないけれど、ここだから」と教えてくれる。ところがその場所にはまだバスがいないので、とりあえずすぐ近くの店に入ってビールを頼んだ。口にした瞬間、うまいなと思わないではなかったのだが、残り三分の一ほどは「ぬるくなると余計においしくないから」と、多少無理して飲み干した。どうも身体はまだ完調ではない。
もちろん今日のユルギュップ観光も時間、体力にかなりの余裕をもっていたからギョレメに戻ってもまだまだ夕方前だった。一度シャワーを浴びて昼間のほこりを落とし、またのんびりとチャイを飲んだ。暇つぶしに「水族館」で想起されるイメージを考えられるだけ書いてみた。