有人島

 「有人島」という言葉に出くわしたとき、馴染みのない単語ではあったが、「無人島」との連想で、その意味はすぐさま判然した。
 果てに憧れるというのは、旅の理由の一つである。大陸の先端、山の頂、南極点、宇宙の限界。
 「日本最南端の有人島」という表現を見て、今度の旅はここに行こうと決めた。日本最南端の有人島、波照間島。関空から石垣島へ飛んで、さらに一時間の航海。隣はもう台湾である。

 ただ、バンコクにいて、波照間島への旅を決めるに至るまでの過程は、少々説明を要する。そのためのキーワードは他に「ソンクラン」「ビジット・ジャパン」「スターアライアンス」の三つがある。

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<ソンクラン>

 タイの旧暦では、西暦の4月中ごろに新年を迎え、それを「ソンクラン」と呼ぶ。今年は13(火)〜15(木)がソンクランの日として祝日である。
 そもそも昨年初めてタイでソンクランの祭りを経験したが、カオサン通りのそれは激しくて無秩序で、楽しいけれど一回で十分だと思った。それもあって、今年はバンコクにいることにあまり魅力を感じなかった。タイのどこかダイビングすることも考えたが、どうしたってこの時期の国内はどこも人でいっぱいで宿も値上がりする。せっかくだから、久しぶりに日本へ行こうかと、ふと、思った。
 実家は関西だが、東京に住む友達にも会いたいので、全日空を予約。バンコクから成田まで飛んだ後、大阪までつないでも値段は同じ。時刻表を見て、少々不便ではあるが、朝方に成田に着いてその足で羽田まで陸上移動し、そこから伊丹へ飛ぶことにした。

   ・3度目の新年はめでたいか

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<ビジット・ジャパン>

 2003年4月から、日本は「ビジット・ジャパン」と銘打った観光客誘致キャンペーンを展開している。
 外国人を日本に迎えることに主眼が置かれているのだが、その一環として、日本国内線の安い航空券が売り出されていた。
 何気なく全日空のタイ支店のホームページを見ていて知ったのだが、日本以外に在住していれば、日本人でもそのチケットが購入できるとのこと。僕の場合、証明にタイ政府発行の労働許可証を提示すればよかった。

   ・VISIT JAPAN CAMPAIGN

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<スターアライアンス>

 そのスターアライアンス・ビジット・ジャパン・エアパスでは、日本国内に入る際にスターアライアンス加盟社便を使うなどのいくつかの条件があるものの、国内のANA、ANK便が一路線1万1千円で購入できる。
 せっかくだから、普段なかなか足を運びにくい所へ使ってみたい。そして、距離に関係なく、一路線の価格なので、これはもうできるだけ長い距離を飛んで、お得感とマイルとを得るべきであろう。

   ・Star Alliance Japan

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<日本最南端の有人島>

 一本の路線で、一番長く飛ぶのはどれだろう。全日空のホームページで、出発地を大阪にして、到着地をプルダウンで選ぶと、北から南の順に並んだ各空港のリストの一番下に石垣があった。
 この時点で、石垣へ飛ぶことを決める。
 旅と人生の先達であるogawa氏のホームページにある、ご家族で石垣島周辺まで旅行されたエピソードを思い出した。大体において、僕が行きたいと思う所にはとっくに訪れていて、より旅心をそそる記録として美しい写真と、控えめなそれでいて的確なコメントと共にウェブに掲載されている。久しぶりにその旅行記を訪れた。海があって空があってそこに光が降り注いでいた。お嬢さんが日に二つ食べていた紅芋アイスが美味そうで、シーサーが屋根に鎮座ましましていた。

   ・ゆ〜らしあ大陸ほっつき歩き

 宿やダイビングなどの情報を集めに、ウェブをふらふらしていたところ、石垣島から船で近隣の八重山の島々へ出られることを知る。その内に出会ったのが「日本最南端の有人島」であるところの波照間島であった。石垣から船で1時間。
 決まりだった。


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